【ゆる〜くレビュー】subsignal “The Beacons of Somewhere Sometime”
はい、というわけでsubsignalのレビュー第二弾いきます。
これだけマメに、しかも長文を書くのは珍しく、それほど気に入っていると思ってもらえれば。
なんでこんなにマイナーなんだ、こんなに良いのに。
ぶっちゃけレコード会社の売り込みが足りないんじゃないかと思ってしまうほどなのですが、母国では人気あるのかな。大丈夫?←余計なお世話
今回のアルバム”The Beacons of Somewhere Sometime”(長いな、タイトルが…)は前回レビューした”La Muerta”の一つ前のアルバムになります。発売は2015年。割とコンスタントに新譜を出しているバンドなんですね。
前回のレビューでこちらの方が少しダークに感じるとさらっと書いていたかと思うのですが、何度か聞き込んで少し印象が変わっています。
少し、こちらの方が「難解」です。
演奏テクニックそのものというよりも(いや、もちろん演奏もテクニカルなんですが)、曲の展開が複雑に入り組んでいるんですね。そして、それぞれの楽曲に対する印象とアルバム全編に感じる印象が統一されるように仕掛けられているように感じます。(って書いても伝わらないだろうなぁ。書き手の表現力の乏しさよ)
ざっくり言うと、こちらの方がプログレらしいってことです(ざっくりしすぎーww)。
アルバムジャケットも、これは良いですね。アルバム全体の雰囲気が良く表現されていると思います。パキっとしていない、少し輪郭が不明瞭な感じ、ぼんやりとした寂しさ。良いですね。
ではでは、ピックアップレビューです。
#3 A Time out of Joint
攻撃的にも感じるようなザクザク刻むギターから始まるイントロを、ぐっと引き絞って聴こえてくる繊細なピアノ。その胸に刺さるような美しい旋律に乗せて歌メロが始まる…この部分だけで私の心は鷲掴みにされましたww
繊細で綺麗なんだけど“静か”という印象はあまりない不思議なメロディですね。淡々と紡がれるからこそ、内側に何か秘めているように感じるのですかね。
そしてサビ。一転して開放されたような雰囲気に。え、こうなるの?歌い出しからここまでの旋律はどこに行ったんだという変わりように最初は呆気にとられましたな。
さらに、ここからまた歌い出しのようなピアノに乗せて…というパターンに戻るのですが、今度はヴォーカルが少し感情的。同じパターン、基本同じメロディなのに、歌い出しとはまったく雰囲気が異なるのですよ。間奏も色んな顔を見せながら展開していくので非常に面白いですね。
この長さにこれだけの要素と印象の変化を詰め込むってすごいな。良曲ですよ。癖になる。
#7 Everything Is Lost
こちらは少し感傷的なアコースティックなサウンドにザクザクしたギターが重なって始まるイントロ。
各パート、非常にテクニカルなのですがあまりそれを前面に押し出さず、感じさせないのが心憎いですね。ミドルテンポの曲にもかかわらずドラムの手数がかなり多いですよね。前には出てこないのでよく聴かないとさらっと流しちゃうかも。
ピアノを伴ったヴォーカルのソロから始まる各パートのソロも聴きどころ。
全体的には爽やかな印象を与えながら、時々攻撃的な側面を見せる。
個人的にこういう曲はすごく好きで、ニヤニヤしちゃいます(←変態ww)。
#8~#11 The Beacons of Somewhere Sometime pt.1~pt.4
組曲になっているタイトルチューン。
4トラックに分けられていますが、全部合わせて25分…くらいかな?ドリムシなら1トラックでもありえるぐらいの尺です(笑)。
ただ、この曲に関しては私はやっぱり4つに分けられている意味があると思いますね。
#8のイントロと#11のアウトロが、#1と同じメロディを繰り返す構成になっていて、これがアルバム全体の印象を統一させる仕掛けになっているんですね。(その他にも同じメロディを仕込んでいる箇所がありますね)
インストだった#1に歌メロを与えた、という感じの#8。コーラスワークが非常に美しく、効果的です。涙腺にくるww
イントロに雰囲気は近いものの同じではないアウトロで静かに#9に繋がるラスト。あー、もうキレイ!!
#9もコーラスワークがもうホントにぐいぐい胸に迫ってきますね。ただただ美しく、聞かせる前半。
中盤からはやや雰囲気を変えてちょっと不穏な感じを出してきます。そこからの突き抜けるギターソロ、その後に続くそろそろ耳に馴染み始めた主題のメロディ。はぁ、上手いなー。
#10はヴォーカルの聴かせどころ。このアルバムでは比較的ずっと淡々と歌っている印象が強いのですが、感情的に歌い上げてます。お馴染みのコーラスもガッツリ仕事してますよ。
#11は、正真正銘のラスト。爽やかな疾走曲。主題のメロディが何度も上手く組み込まれてる。こうしてイメージが刷り込まれていくんだな(笑)。
それぞれの楽曲がそれぞれの雰囲気を持ちつつも、一曲の中で激しく変化を繰り返すという複雑な構成なのですが、主題となってるメロディを要所要所で繰り返してるため、ああ、1つの作品なんだなぁという感じがします。
さらに、それを#1とも共有しているのでアルバム全体として1つである、という印象を強くするんですよね。
これは本当に良いですよ。
ただし、噛めば噛むほど…のスルメアルバムです。
キラーチューンといえる曲がないので、派手さはないですがジワジワ侵食されますね。
興味を持った方は噛み締めてみてください(笑)。